理科の大問1「小問集合」の解説です。
各単元からまんべんなく、一問一答形式で6問出題されます。
多くが選択問題で1問あたりの3点の配点があるため、確実に正解していきたいですね!
ほとんどが基礎的な内容ですが、中には悩ましいものや計算問題も含まれます。自信を持って解答できるように練習していきましょう!
問題
生物分野から3問、化学・物理・地学分野からそれぞれ1問の計6問です。
それでは1問ずつ見ていきましょう!
解答と解説
設問1
生物を観察するときのスケッチのしかたについて述べた文として、最も適当なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。
ア ルーペを使って観察したときは、ルーペの視野を示す円をかく。
イ 線を重ねがきして、濃淡をつける。
ウ よくけずった鉛筆を使い、細い線や小さい点ではっきりとかく。
エ 観察の対象だけでなく、背景もかく。
令和6年度新潟県公立高等学校入学者選抜学力検査 理科〔1〕(1)
「スケッチのしかた」についての問題ですね!
理科の観察でスケッチをかくときの主な注意点は以下の通りです。
「スケッチは絵画やお絵描きじゃなくて、観察の記録だからキチンとルールがあるんだな~」と覚えておきましょう!
黄色で示した部分が選択肢に入っている部分です。
答え:ウ (正答率 85.4%)
設問2
図1のように、うすいゴム膜を張った透明なパイプに、プラスチックの管を差し込んだ器具がある。図2は、この器具を水の中に入れて、パイプをいろいろな向きに回転させたときの、ゴム膜のへこみ方を模式的に表したものである。このとき、水中にある器具が、水から受ける力について述べた文として、最も適当なものを、次のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。
ア 水中にある器具のあらゆる面に対して水圧がはたらき、水中にある器具には、全体として上向きの力がはたらく。
イ 水中にある器具のあらゆる面に対して水圧がはたらき、それらの力はつり合っている。
ウ 水中にある器具のゴム膜のみに対して水圧がはたらき、水中にある器具には、全体として上向きの力がはたらく。
エ 水中にある器具のゴム膜のみに対して水圧がはたらき、それらの力はつり合っている。
令和6年度新潟県公立高等学校入学者選抜学力検査 理科〔1〕(2)
水圧に関しての問題ですね。選択肢で問われているのはこの2点です。
- 水圧がはたらくのは、器具の全面? それとも、ゴム膜のみ?
- 水中の器具にかかる力は全体として上向き? それとも、つりあっている?
1点目、水圧がはたらく方向は器具全面です。
水圧は水中の物体のすべての面に対して垂直にはたらくことを覚えておきましょう!
2点目、器具にかかる力は全体として上向きです。
水圧は水面に対して深ければ深いほど大きくなります。
つまり同じ物体でも水面に近い場所にはたらく水圧は小さく、深い場所にはたらく水圧は大きくなります。物体の上面と下面にはたらく水圧の差が浮力となって、物体を上に押し上げるわけですね!
図2で器具にかかる力を矢印で書き入れると下のようになります。
矢印の長さは力の大きさを表しています。深いところのゴム膜のほうが強く押されているのがわかりますね!
この矢印を図に書き入れたり、図から選ぶ問題もよく出題されますよ!
答え:ア (正答率 74.4%)
設問3
右の図の顕微鏡を用いて、オオカナダモの葉の細胞を観察した。この観察について述べた文中の X 、Y に当てはまる語句の組合せとして、最も適当なものを、下のア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。
※顕微鏡の図は省略
令和6年度新潟県公立高等学校入学者選抜学力検査 理科〔1〕(3)
細胞の観察に関する用語問題です。
結論からいうと、この観察対象【X】は核、染色薬【Y】は酢酸オルセイン液です。
葉緑体はそれ自体が緑色にみえます。植物が緑色にみえるのも葉緑体があるからです。したがって観察する際に着色する必要はありませんから、この実験で観察しているのは核だとわかります。
問題文中にある「どの細胞にも一つずつある丸い粒」から考えて核だと判断してもいいですね!
葉緑体は通常、一つの細胞に複数存在しますから該当しません。
酢酸オルセインや酢酸カーミンは核の中に存在する染色体を赤く染める染色液です。
学校の授業で実験した際にお酢のような強烈な酸っぱいにおいがしたのを覚えている人も多いのではないでしょうか?
ベネジクト液はブドウ糖や麦芽糖と反応すると赤褐色の沈殿を生じる指示薬です。
理科では主にだ液のはたらきを調べるときに使用します。
答え:エ (正答率 66.4%)
設問4
理科の授業で、状態変化や化学変化を観察するため、次のア~エの実験を行った。このうち、状態変化を観察した実験について述べた文として、最も適当なものを、ア~エから一つ選び、その符号を書きなさい。
ア 硫酸に水酸化バリウム水溶液を加えると、沈殿ができた。
イ 炭酸水素ナトリウムを加熱すると、気体と液体が発生した。
ウ 食塩を加熱すると、液体になった。
エ うすい塩酸にマグネシウムを加えると、マグネシウムが溶けて、気体が発生した。
令和6年度新潟県公立高等学校入学者選抜学力検査 理科〔1〕(4)
状態変化とはなんでしょうか?
これが分かれば迷わずに正解を選べます。
今回の問題で大切なのは…“状態変化によって物質の構成元素が変わることはありません。”これです。
選択肢の中で物質がそのままで状態を変えているものは、“ウ” だけですね!
ちなみに、食塩の融点は約801℃だそうです。超高温なこともあり、ふつう中学校では行わない実験ですから、これでいいのか迷った生徒さんも多いかもしれませんね。
答え:ウ (正答率 33.5%)
他の選択肢についても確認しておきましょう。
- アの 硫酸 + 水酸化ナトリウム水溶液 の実験は3年生で行う中和反応の実験です。発生する白い沈殿は硫酸バリウムです。
- イの 炭酸水素ナトリウムの加熱 の実験は2年生で行う熱分解の実験です。炭酸水素ナトリウムを加熱すると、炭酸ナトリウム・二酸化炭素・水 に分解されます。
- エの うすい塩酸 + マグネシウム の実験は1年生で行う水素の発生の実験です。
設問5
生物の生殖において、親の細胞が生殖細胞をつくるとき、親が持つ1対の遺伝子は、減数分裂により、別々の生殖細胞に入る。遺伝の規則性における、この法則を何というか。その用語を書きなさい。
令和6年度新潟県公立高等学校入学者選抜学力検査 理科〔1〕(5)
用語問題は確実に正解していきたいですね。
答え:分離の法則 (正答率 42.9%)
メンデルのエンドウの実験で学んだ用語ですね。
設問6
室温20℃、湿度20%の部屋で、水を水蒸気に変えて放出する加湿器を運転したところ、室温は20℃のままで、湿度が50%になった。このとき、加湿器からこの部屋の空気中に放出された水蒸気量は、およし何gか。最も適当なものを、次のア~エの中から一つ選び、その符号を書きなさい。ただし、20℃の空気の飽和水蒸気量を\(17.3g/m^3\)、この部屋の空気の体積を\(50m^3\)とする。
令和6年度新潟県公立高等学校入学者選抜学力検査 理科〔1〕(6)ア 173g
イ 260g
ウ 433g
エ 865g
湿度についての計算問題です。まず湿度について確認しましょう。
★湿度の求め方
空気中には水蒸気が含まれています。湿度とは「今の温度の空気\(1m^3\)中に含むことのできる水蒸気の最大量(飽和水蒸気量)に対する、実際の空気中の水蒸気量の割合」です。
したがってこのような公式で求めることできます。
しかし、今回の問題は単純に湿度を求めればいい問題ではありませんから、以下のように解きます。
気温は20℃のまま湿度のみが変化しているので、まずは初めの湿度20%と加湿後の50%それぞれの空気\(1m^3\)中の水蒸気量を求めましょう!
最初の空気に含まれる水蒸気量はこの空気の飽和水蒸気量\(17.3g/m^3\)の20%なので、
$$ 17.3 \times 0.2 = 3.46 $$
加湿後の空気に含まれる水蒸気量はこの空気の飽和水蒸気量\(17.3g/m^3\)の50%なので、
$$ 17.3 \times 0.5 = 8.65 $$
よって初めの空気は\(3.46g/m^3\)、加湿後の空気は\(8.65g/m^3\)の水蒸気を含んでいるので、これらの差が放出された(増えた)水蒸気量になります。
$$8.65 – 3.46 = 5.19$$
この\(5.19g/m^3\)は\(1m^3\)中の水蒸気量です。「この部屋の空気の体積は\(50m^3\)」と問題文にありますから、50倍すれば部屋に放出された水蒸気量になります。
$$ 5.19 \times 50 = 259.5 $$
259.5gに最も近い選択肢はイの260gですね!
答え:イ (正答率 47.2%)
教科書とワークを活用しよう!
大問1に出題された6問を解説してきました。
選択問題が中心で用語だけでなく考え方も多く問われましたね。
社会と同様、理科の入試対策も大切にしてほしいのは普段の学校の授業と定期テスト対策です。定期テスト対策で問われるポイントと理科の入試問題の大半は同じです。
そのため受験勉強でも教科書と学校ワークが大いに使えます。
学校ワークで基本用語や考え方・計算を押さえて、教科書を読んで流れや詳細を確認していきましょう。
普段の授業では特に実験に積極的に参加してください!用語や計算は後からでも学習できますが、実際に実験器具に触れて実験結果を目でみる、試験薬の反応の様子や臭いを感じるのはその時しかできません。「百聞は一見に如かず」です。教科書やワークの問題で単に暗記を繰り返すよりも、実験での一度きりの体験のほうが強く印象に残ります。
特に1・2年生は日々の授業を大切にして積み重ねていってください。3年生もピンとこない実験はネットで実験の動画を検索してみたり、日常の生活体験で見ることができないか探してみたりしてみましょう!
理解が深まり、結果として解ける問題の幅が広がっていきますよ!
大問1の解説は以上です!最後までお読みいただきありがとうございました!