数学の大問1「小問集合」の解説です。
計算問題から始まり、関数、図形、資料の活用の基本問題が例年出題されます。
ここ数年で図形を中心にやや難度が上がり気味ですが、この大問は数学における大きな得点源です。
1問あたりの配点が4点で8問の出題……つまりこの大問だけで30点以上が得点できます。
「数学が苦手!」という子も多いと思いますが、この大問1で取れる問題をしっかりと正解できるようにするのが数学攻略において最も大切なことです。
苦手な生徒さんは試験時間いっぱいを使っても正確に解けるように、得意な生徒さんは迷わず素早く正確に解けるように練習を繰り返しましょう!
では問題を見ていきましょう。
問題
左側の計算問題は基本レベルですので丁寧に解いて着実に正解しましょう。
この5問だけでも20点取れますよ!
右側は問7がやや難しめですが60点以上を目指す生徒さんは正解したいところです。
正答と正答率
各問の正答と県教育委員会の発表した正答率は以下の通りです。
- \(-2\) (正答率93.7%)
- \(11a-13b\) (正答率90.4%)
- \(2x\) (正答率91.2%)
- \(\displaystyle\frac{\sqrt{2}}{5}\lt\frac{3}{10}\lt\frac{1}{\sqrt{10}}\) (正答率50.2%)
- \(x=-5\pm\sqrt{13}\) (正答率56.8%)
- \(2\) 分 \(30\) 秒 (正答率51.3%)
- \(\angle x=36\) 度 (正答率33.3%)
- およそ \(2700\) 個 (正答率47.8%)
解説
(1)正の数・負の数の加法
暗算でサクッと解いてもいいですが、勢い余ってミスすることもありますので丁寧にいきましょう。
教科書通りに同符号の項をまとめてから計算すると確実です。
\begin{eqnarray}3-12+7&=&3+7-12\\&=&10-12\\&=&-2\end{eqnarray}
もちろん、前の方から順番に計算しても問題ありません。
\begin{eqnarray}3-12+7&=&-9+7\\&=&-2\end{eqnarray}
(2)文字式の計算
分配法則を使ってカッコを外してから同類項をまとめましょう。
\begin{eqnarray}3(2a-b)-5(-a+2b)&=&6a-3b+5a-10b\\&=&6a+5a-3b-10b\\&=&11a-13b\end{eqnarray}
(3)単項式の除法
単項式の除法の計算は式を分数に直して計算するのが基本になります。
先に累乗を計算するのを忘れずに!
\begin{eqnarray}18xy^2\div(-3y)^2&=&18xy^2\div9y^2\\&=&\displaystyle\frac{18xy^2}{9y^2}\\&=&2x\end{eqnarray}
※今回は\(18xy^2\div9y^2\)が割り切れるので、そのまま割り算をしても問題ありません。
★指数法則
累乗の掛け算・割り算で利用する大切なルールが指数法則です。
「指数」とは\(x^2\)や\(-5a^2b^3\)のような累乗を表す右上の小さな数字のことです。
このような公式なので確認してみましょう。
- \(a^n\times a^m = a^{n+m}\)
- \(a^n\div a^m = a^{n-m}\)
- \((a^n)^m = a^{nm}\)
- \((ab)^n = a^nb^n\)
今回の問題では2.と3.の公式を利用しました。
特に3.の公式を利用する部分は注意!
\((-3y)^2 = (-3)^2y^2=9y^2\)となるので間違えないようにしましょう。
(4)平方根の大小関係
根号(※ルート\(\sqrt{}\)のこと)を含んだ分数の大きさ比べです。
この問題は次の2パターンの解き方ができます。
- 通分をして分子の大小を比較する(王道の解き方)
- 2乗して大小を比較する(ややパワー系寄りの解き方)
まずはひとつ目の解き方でやってみましょう。
$$\displaystyle\frac{3}{10} , \frac{\sqrt{2}}{5} , \frac{1}{\sqrt{10}}$$
分母を\(10\)に揃えたいので、\(\displaystyle\frac{\sqrt{2}}{5}\)の分母分子を2倍します。
$$\displaystyle\frac{\sqrt{2}}{5} = \frac{2\sqrt{2}}{10}$$
\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{10}}\)は分母を有理化します。
$$\displaystyle\frac{1}{\sqrt{10}} = \frac{\sqrt{10}}{10} $$
これで分母が10に揃ったので後は分子の大きさを比べるだけです。
$$\displaystyle\frac{3}{10} , \frac{2\sqrt{2}}{10} , \frac{\sqrt{10}}{10}$$
\(2\sqrt{2} = \sqrt{8}\)、\(3 = \sqrt{9}\)なので、これらを分子が小さいもの順に並べると
$$\displaystyle\frac{\sqrt{8}}{10}\lt\frac{\sqrt{9}}{10}\lt\frac{\sqrt{10}}{10}$$
最後にそれぞれの数字を元の書き方に戻して答えとなります。
$$\displaystyle\frac{\sqrt{2}}{5}\lt\frac{3}{10}\lt\frac{1}{\sqrt{10}}$$
もうひとつの解き方でもやってみましょう。
根号は2乗することで外すことができます。
正の数同士では2乗しても大小関係は変わりませんから、難しいことは考えずに大きさだけ比べたいのであれば2乗してしまうのが手っ取り早いこともあります。
$$\displaystyle\frac{3}{10} , \frac{\sqrt{2}}{5} , \frac{1}{\sqrt{10}}$$
初手ですべてを2乗することで根号をなくします。
$$\displaystyle\frac{9}{100} , \frac{2}{25} , \frac{1}{10}$$
通分して分母を100に揃えます。
$$\displaystyle\frac{9}{100} , \frac{8}{100} , \frac{10}{100}$$
これらを分子が小さいもの順に並べると
$$\displaystyle\frac{8}{100}\lt\frac{9}{100}\lt\frac{10}{100}$$
元の形に戻して終わりです。
$$\displaystyle\frac{\sqrt{2}}{5}\lt\frac{3}{10}\lt\frac{1}{\sqrt{10}}$$
(5)2次方程式
平方根の考え方を利用した2次方程式の解き方で解きましょう。
\begin{eqnarray}(x+5)^2 &=& 13\\ x+5 &=& \pm\sqrt{13}\\ x &=& -5\pm\sqrt{13}\end{eqnarray}
★平方根を利用した2次方程式の解き方
2次方程式には次の3つの解き方があります。
- 因数分解を利用した解き方
- 平方根を利用した解き方
- 2次方程式の解の公式を利用
極端な話、解の公式を利用すればすべての2次方程式を解くことができますが、式に合わせて使い分けることで最短ルートで楽に解くことができます。
中でも今回用いた「平方根を利用した解き方」を苦手とする生徒さんが多い印象が個人的にはありますので、解き方を確認していきましょう。
・パターン①”\(x^2=\) ○”の形になるもの
式を整理することで\(x^2=5\)のように、左辺が\(x^2\)、右辺が定数の形にできる式で使います。
このようなルールで覚えましょう!
$$x^2 = \bigcirc \iff x = \pm\sqrt{\bigcirc}$$
※○には\(x\)を含まない定数が入ることに注意しましょう。
・パターン②”\((x+\bigtriangleup)^2=\) ○”の形になるもの
今回利用したパターンです。
今回の設問のように左辺が\(x\)の1次式の平方(※2乗のこと)の形、右辺が定数の形になる式で使うことができます。
このようなルールです。
\begin{eqnarray}(x+\bigtriangleup)^2 = \bigcirc &\iff& x+\bigtriangleup = \pm\sqrt{\bigcirc}\\ &\iff& x = -\bigtriangleup\pm\sqrt{\bigcirc}\end{eqnarray}
「左辺の2乗を取ったら右辺は\(\pm\sqrt{ }\)になるんだ!」って覚えておこう!
この式ですが、解の公式を利用しても解くことができるのでやってみましょう。
上のやり方で解くのが最短で理想的ですが、解の公式で解いた受験生も多かったかもしれません。
\begin{eqnarray}(x+5)^2 &=& 13\\ x^2+10x+25 &=& 13\\ x^2+10x+12 &=& 0\\ x &=& \displaystyle\frac{-10\pm\sqrt{10^2-4\times1\times12}}{2\times1}\\ &=& \frac{-10\pm\sqrt{100-48}}{2}\\ &=& \frac{-10\pm\sqrt{52}}{2}\\ &=& \frac{-10\pm2\sqrt{13}}{2}\\ &=& -5\pm\sqrt{13}\end{eqnarray}
やや数字も大きく、約分も必要になるため最初の解き方に比べて手順が激増しました…
入試には意図的に、気づいた人は簡単に、気づけなくても解けるけど大変になる問題が出題されがちです。
計算は特に、楽に・早く・正確に解ける方法でやれるように普段から練習しておきましょう!
(6)反比例の利用
ここから右ページです。前半の問題よりも思考を必要としますから注意深く取り組みましょう。
まず問題文を再度確認してみましょう。
電子レンジで食品が温まるまでの時間は、電子レンジの出力に反比例する。ある食品の適切な加熱時間が500Wの出力で3分のとき、600Wの出力での適切な加熱時間は何分何秒か、答えなさい。
令和6年度新潟県公立高等学校入学者選抜学力検査 数学〔1〕(6)
このような実生活に即した問題が出題されやすいのは最近のトレンドですね。
「反比例」と問題文に書いてくれていますので、反比例の式を利用して解いてみましょう。
食品が温まるまでの時間を\(y\)分、電子レンジの出力を\(x\)Wとすると、
$$\displaystyle y = \frac{a}{x}$$
と表わされる。これを\(a\)について整理すると
$$a = xy $$
500Wでの加熱時間が3分なので、この式に\(x=500\) , \(y=3\)を代入すると
$$a = 500\times3 = 1500$$
したがって、この反比例の式は \(\displaystyle y = \frac{1500}{x}\)だとわかる。
600Wでの加熱時間(\(y\))はこの式に\(x=600\)を代入することで求められるので
$$\displaystyle y = \frac{1500}{600} = \frac{5}{2} $$
\(\displaystyle\frac{5}{2}\)分は\(2.5\)分(\(1\)\(\displaystyle\frac{1}{2}\)分)、\(0.5\)分(\(\displaystyle\frac{1}{2}\)分)は\(30\)秒。
よって求める時間は、2分30秒。
★反比例の式
\(y\)が\(x\)に反比例するとき、\(\displaystyle y = \frac{a}{x}\) の関係が成り立ちます。
これがあまりピンと来なくて(+分数なのも相まって)反比例に苦手意識を持っている生徒さんも多いのではないでしょうか?
上の解答でも使いましたが、反比例の式の両辺に\(x\)を掛けて左右を入れ替えると\(a\)について解くことができます。
\begin{eqnarray}\displaystyle y &=& \frac{a}{x}\\ xy &=& a\\ a &=& xy\end{eqnarray}
\(a\)は比例定数(式によって異なる決まった数)です。
つまり反比例の比例定数は対応している\(x\)と\(y\)の値を掛ければ求められるわけです。
言い換えれば、「反比例」の関係というのは、\(x\)と\(y\)の積が常に一定の値(比例定数)になる関係になります。
この感覚を持つだけで反比例の問題へのハードルがグッと下がりますよ!
(7)円周角と中心角
この大問1で最も正答率の低かった問題です。
円と角についての問題は毎年出題されており、例年やや難しめの問題が出題されますが今回の問題もその傾向に沿ったものになっています。
この手の問題は補助線の引き方がキモです。答えに近づける場所に補助線を引けるよう、さまざまな問題を解いて練習しておきましょう。
半円の中心をOとし、半径OCを結びます。
そうやってできた中心角\(\angle\)BOCの大きさを\(a\)とし、等しい線分や角に印をつけると以下のようになります。
このように書き込むことができたらあとは順番に角の大きさを求めていきましょう!
\(\angle a\)の大きさを求めます。
ここは半径5cm、この長さ2\(\pi\)cmのおうぎ形の中心角です。
おうぎ形の中心角の求め方はいくつかありますが、今回は弧の長さについての方程式を作って求めてみましょう。
中心角\(a^{\circ}\)のおうぎ形の弧の長さは、直径 \(\times \pi \times \displaystyle\frac{a}{360}\)で求められます。
この公式を左辺で使い、弧の長さは\(2\pi\)なのでこれを右辺に置くと
$$10 \times \pi \times \displaystyle\frac{a}{360} = 2\pi$$
このような方程式を作ることができますので、これを解きます。
10と360を約分して、両辺を\(\pi\)で割って\(\pi\)を消去すると
$$\displaystyle\frac{a}{36} = 2$$
両辺に36を掛けます。
$$a = 2 \times 36 = 72$$
よって、\(a=72^{\circ}\)です。
求める\(\angle x\)は\(\stackrel{\huge\frown}{BC}\)に対する円周角で、いま求めた\(\angle a\)は同じ弧に対する中心角になります。
同じ弧に対する円周角は中心角の\(\displaystyle\frac{1}{2}\)なので、
$$\angle x = 72 \times \displaystyle\frac{1}{2} = 36$$
したがって、\(\angle x = 36^{\circ}\)。
(8)標本調査
例年、大問1の最後の問題は「資料の活用」に関する問題が出題されており、今回は中3の最後に習う「標本調査」の問題が出題されました。
問題文を再度確認しましょう。
箱の中に同じ大きさの白玉がたくさん入っている。標本調査を行い、この箱の中にある白玉の個数を推定することにした。この箱の中に、白玉と同じ大きさの赤玉300個を入れ、よくかき混ぜた後、箱の中から100個の玉を取り出したところ、その中に赤玉が10個あった。この箱の中には、およそ何個の白玉が入っていると推定されるか、答えなさい。
令和6年度新潟県公立高等学校入学者選抜学力検査 数学〔1〕(8)
標本調査の考え方の基本は、母集団と標本における比の関係は等しいという点にあります。
この問題での母集団は「箱の中に入っているすべての玉」、標本は「取り出した100個の玉」です。
この母集団と標本における白玉と赤玉の個数の比は等しいと考えて以下のように解くことができます。
箱の中に入っている白玉の個数を\(x\)個とすると、箱の中には白玉\(x\)個と赤玉300個が入っています。
標本として取り出した100個の玉のうち、10個が赤玉だったので残りの90個は白玉です。
つまり、標本における白玉と赤玉の個数の比は\(90 : 10 = 9 : 1\)になります。
この比と箱の中にある白玉と赤玉の個数の比が等しくなるので、次のような比例式が成り立ちます。
$$ x : 300 = 9 : 1$$
これを解くと、\(x = 2700\)
したがって箱の中に入っている白玉の数は、およそ2700個。
上の解答では白玉と赤玉の比で比例式を作りましたが、母集団全体と赤玉の個数に着目して解くこともできます。
箱の中に入っている白玉の個数を\(x\)個とすると、箱に入っている玉の個数は\(x+300\)個と表されます。
よって母集団全体とそこに含まれる赤玉の個数の比は、\(x+300 : 300\)
また、標本として取り出した100個の玉のうち10個が赤玉だったので、標本全体とそこに含まれる赤玉の個数の比は、\(100 : 10 = 10 : 1\)
この2つの比が等しくなるので、次のような比例式が成り立ちます。
$$ x+300 : 300 = 10 : 1$$
これを解くと
\begin{eqnarray}x+300 &=& 3000\\ x &=& 3000–300\\ &=& 2700\end{eqnarray}
したがって箱の中に入っている白玉の数は、およそ2700個。
最初の解き方の方がシンプルですね笑
問題自体はさほど難しいものではなかったのですが、正答率が50%を下回りました。
おそらく多くの受験生が習いたての状態で受験を迎えたことで練習不足だったことが正答率の低い要因なのではないかと思います。
数学においては遅くとも中3の冬休み中には教科書の内容を最後まで先取りして終らせて、3年生後半の学習内容でも入試問題レベルの練習を十分に積んでから入試本番に臨めるようにしましょう。
対策は基本問題と過去問の反復練習!
大問1の解説をしてきましたがいかがだったでしょうか?
数学の入試問題のスタートとなるこれらの問題はすべての受験生が万全の準備をした状態で臨みたいところです。
この解説で少しでも「ん!?」と思うことがあったら、教科書や学校ワークに戻って復習しましょう!
この大問1は出題の傾向が変わることはほとんどありませんので、各基本事項を抑えたら模試や実力テスト、過去問で練習→解けなかった問題の類題を戻って練習、を繰り返して自信をつけていってください。
類題の練習には教科書や学校ワーク、基礎・基本レベルの問題集がオススメです。
たくさん練習して、入試数学の最初の大問をスムーズに解答して続く問題に進めるようにしておきましょう!
大問1の解説は以上です!最後までお読みいただきありがとうございました!